こんにちは、やまとです。
今回紹介するのは大手鉄鋼会社です。日本の鉄鋼業界は、長い歴史を持ち、国内外で高い評価を受けている分野ですが、現在、いくつかの重要な課題と変革の中にあります。
中国やインドなど、新興国の鉄鋼メーカーの台頭により、グローバル市場での競争が激化しています。これにより、日本の鉄鋼メーカーは価格競争力を維持しながらも、高付加価値製品の開発に力を入れる必要が出てきています。
また、環境規制の強化により、高炉メーカーは脱炭素対応を迫られています。技術革新や投資資金の確保が求められ、各社は対応に追われています。
今回は、注目の大手鉄鋼会社について紹介していきたいと思います。
※各種指標は2024年9月6日時点のもの
5401 日本製鉄
国内最大手の鉄鋼メーカー。粗鋼生産量では世界4位。1901年創業の官営八幡製鉄所からの歴史がある。2012年に新日本製鐵と住友金属工業が統合し新日鉄住金に、その後2019年に現社名に変更。神戸製鋼所や韓ポスコと株式持ち合い。
主に高級鋼材を製造し、自動車、建設、インフラ、機械、エネルギーなど多岐にわたる産業に供給しています。
アメリカの同業USスチールを約2兆円で買収予定。ただし、大統領選挙での争点にもなっており、実現するかどうか微妙な状況です。
5411 JFEホールディングス
国内2位。2002年、日本鋼管(NKK)と川崎製鉄が統合。鉄鋼だけでなくエンジニアリングや都市開発、リサイクル事業にも展開しています。JFEスチールを中核とし、高品質の鋼材を提供することに強みがあります。2009年にインドのJSWスチールと資本提携。
商社事業の強化に重点を置いているようで、セルビアに電磁鋼板の加工販売会社設立し、ヨーロッパでEV駆動モーター需要の獲得を狙っているようです。
5406 神戸製鋼所
1905年、鈴木商店が小林製鋼所を買収し改称。鉄鋼、アルミ、銅、建設機械、電力など多角経営を行っています。鉄鋼は自動車向けの比率が高い。材料加工技術に強みを持っています。
アルミ板事業を見直し、中国向け母材を現地調達に切り替え効率化を図るようです。
2017年にアルミ・銅製品の品質データ不正問題が発覚、当時の経営トップが引責辞任。
高炉と電炉 比較
高炉は、鉄鉱石を主原料として鉄を製造する方法で、主に大規模な鉄鋼製造に使用されます。高温(約1,500度)の炉内で鉄鉱石とコークス(石炭を加工したもの)を燃焼させ、溶けた鉄を作り出します。
電炉は、主に鉄スクラップ(廃鉄)を溶かして鉄を製造する方法です。電気のアーク(電気放電)を利用して鉄を溶解し、鋼材を生産します。高炉と比べて設備がコンパクトであり、設置や運用コストが比較的低いです。
リスクファクターは?
1. 需要の変動リスク
- 経済状況の変動:鉄鋼の需要は、主に自動車、建設、インフラなどの産業に依存しています。したがって、これらのセクターの経済状況や景気後退が直接的に需要に影響を与えるリスクがあります。
- 新興市場の成長鈍化:新興国(特に中国やインド)での成長鈍化は、鉄鋼需要の減少につながり、鉄鋼価格や輸出に影響を与える可能性があります。
2. 原材料価格の変動リスク
- 鉄鉱石・石炭価格の変動:鉄鋼の主な原材料である鉄鉱石やコークス用石炭の価格は市場の需給バランスによって変動します。特に、原材料価格の高騰は製造コストを押し上げ、利益率の低下につながるリスクがあります。
- 供給チェーンの混乱:地政学的リスクや自然災害などにより、鉄鉱石の供給チェーンが混乱するリスクもあります。
3. 競争リスク
- グローバル競争の激化:中国やインドなどの新興国メーカーの台頭により、価格競争が激化しています。競争力のある価格を維持するためにはコスト削減が必要ですが、これが難しい場合、利益率の低下につながります。
- 技術革新の遅れ:新技術や高付加価値製品の開発で他社に遅れを取ることは、競争力の低下につながります。
4. 環境規制リスク
- カーボンニュートラルへの対応:鉄鋼製造はエネルギー集約型であり、二酸化炭素の排出量が多いため、各国の環境規制強化に伴うコスト負担が増大しています。環境対応投資が必要となり、設備更新費用が大幅に増加する可能性があります。
- 持続可能な技術への移行コスト:水素還元製鉄などの新しい環境対応技術への移行には莫大な投資が必要であり、収益性に影響を与えるリスクがあります。
5. 為替リスク
- 円高の影響:日本の鉄鋼メーカーは輸出依存度が高いため、為替変動の影響を受けやすいです。円高になると、日本製品の競争力が低下し、海外売上が減少するリスクがあります。
6. 政策・規制リスク
- 保護主義政策:各国の保護主義的な政策(関税引き上げや輸入制限など)は、日本の鉄鋼輸出に対するリスクを増大させる可能性があります。
- 貿易摩擦:特に米中貿易摩擦など、国際的な貿易摩擦は鉄鋼業界の輸出市場に影響を与える可能性があります。
7. 技術的リスク
- 設備の老朽化:鉄鋼業界は大規模なインフラと設備を必要とするため、老朽化した設備の更新やメンテナンスには大きなコストがかかります。これにより、競争力が低下するリスクがあります。
- サイバーセキュリティリスク:デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、サイバー攻撃による生産停止や情報漏洩などのリスクも高まっています。
8. 地政学的リスク
- 地域紛争や政治的不安定性:鉄鉱石の主要供給国であるオーストラリアやブラジルなどの政治的安定性や地政学的リスクも、供給チェーンに影響を与える可能性があります。
9. その他のリスク
- 自然災害や事故リスク:鉄鋼製造は災害や事故の影響を受けやすい産業です。大規模な火災、地震、洪水などによる工場の停止や設備の損害は、業績に大きな影響を与える可能性があります。
比較チャート
※2024年9月6日現在のチャート
3社の中では神戸製鋼所がここ5年で大きく上昇。特に2023年に大きく上げています。鋼材の値上げによる好業績が背景のようです。
再大手の日本製鉄も値上げにより業績好調。2020年頃の1000円割れから現在は3000円を超える。
JFEが現状最も割安で配当利回り5%台後半。
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